相続の際に知っておきたい相続土地国庫帰属制度とは?費用やメリットも解説
- この記事のハイライト
- ●相続土地国庫帰属制度とは相続した不要な土地の所有権を国に返すことができる制度である
- ●相続土地国庫帰属制度を利用する際の費用は1筆あたり1万4,000円の審査手数料と10年分の土地管理費相当額の負担金である
- ●相続土地国庫帰属制度のメリットには必要のない土地だけを手放せることやさまざまな種類の土地が対象であることなどが挙げられる
不要な土地を相続すると、所有者はもちろん、地域の土地活用にも支障が生じることがあります。
そのような事態を避けるためには、相続土地国庫帰属制度の利用がおすすめです。
そこで今回は、相続土地国庫帰属制度とはどのような制度なのか、費用やメリットなどもふまえて解説します。
一宮市・名古屋市・西尾張で不動産を相続する可能性のある方は、ぜひご参考にしてください。
相続の際に知っておきたい相続土地国庫帰属制度の概要や要件とは
不動産は、プラスの財産であるとは限りません。
なかには、相続すると活用も売却も困難な物件があります。
たとえば、地方にある畑や山林を相続すると、使わないのに手放すことが難しくて困ってしまうでしょう。
しかし、これまでは不要な財産だけを相続しないことができず、おもな選択肢は「すべての財産を相続放棄する」か「しかたなく相続する」の2つでした。
相続放棄すると、プラスの財産もすべて受け取ることができません。
一方、しかたなく相続すると管理や税金が負担になるうえ、放置されたまま相続が繰り返されて所有者不明になることが多々あります。
その結果、周辺地域も含めた土地の利活用ができず、地域の発展に影響が生じてしまう事例が多発していました。
そのような事態を防ぐために制定されたのが、相続土地国庫帰属制度です。
制度の概要とは
相続土地国庫帰属制度とは、相続した不要な土地の所有権を国に返すことができる制度です。
相続や遺贈によって土地を取得した相続人が負担金を納めると、土地の所有権を国に帰属させることができます。
制度を利用する際は必要書類をそろえて、土地の所在地を管轄する法務局または地方法務局へ申請します。
制度を利用するための要件とは
相続土地国庫帰属制度は、不要な土地を取得して困っている方にとって助かる制度ですが、だれでも利用できるわけではありません。
利用するためには、原則として以下の要件をすべて満たす必要があります。
- ●相続人である
- ●相続または遺贈によって土地や土地の共有持分を取得した
- ●却下事由や不承認事由に当てはまらない土地である
たとえば、遺贈を受けたのが相続人以外であったり、生前贈与による取得であったりした場合は利用できません。
そして、土地が却下事由や不承認事由に当てはまらないことも求められます。
却下事由には、建物があることや担保権が設定されていることなどがあり、これらに該当する場合は申請ができません。
不承認事由には管理や処分の妨げとなる有体物があることや、ほかの土地への通行が妨げられていることなどが挙げられ、該当する場合は申請しても不承認となります。
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相続土地国庫帰属制度を利用する際にかかる費用とは
相続土地国庫帰属制度は、無料で利用できるわけではありません。
利用する際には2種類の費用がかかり、支払うタイミングや金額などがそれぞれ異なります。
まず、支払うタイミングを把握するために申請手続きの流れを確認しましょう。
申請手続きの流れとは
申請の際は、まず必要書類を準備します。
必要書類は承認申請書のほか、土地の位置および範囲を明らかにする図面や土地の形状を明らかにする写真、申請者の印鑑証明書などです。
必要書類がそろったら法務局または地方法務局へ提出し、審査手数料を納付して承認申請をおこないます。
申請すると法務局担当官による書類の審査や、必要に応じて土地の実地調査などがおこなわれます。
審査や調査が終わって承認されたら、負担金を納付して手続き完了です。
制度の利用時にかかる費用の目安とは
申請手続きの流れを確認すると、制度を利用する際にかかる費用は審査手数料と負担金であることがわかります。
審査手数料は申請時に支払う費用で、金額は土地1筆あたり1万4,000円です。
そして承認を受けたあとは、10年分の土地管理費相当額の負担金を支払います。
10年分の土地管理費相当額と聞いても、費用の目安がわかりにくいので、負担金算定の具体例を確認してみましょう。
管理費は土地の種類によって変わるため、負担金も「宅地・田や畑・森林・その他」と種類ごとに設定されています。
申請した土地が宅地の場合、負担金は面積にかかわらず20万円です。
ただし、宅地のある地域が市街化区域または用途地域に指定されている場合は、草刈りなどの管理が必要となるため、面積に応じて金額が変わります。
田や畑の負担金も基本的には宅地と同額の20万円ですが、市街化区域や用途地域、農用地区域にある場合は面積によって変わるので注意が必要です。
申請した土地が森林の場合は、面積に応じて算定されます。
面積区分は6つあり、算定の際は該当する区分に設定されている算定式を使います。
たとえば800㎡の森林は、750㎡超1,500㎡以下の面積区分の算定式である「面積×24(円/㎡)+23万7,000(円)」で計算すると、負担金は25万6,200円です。
そして、その他に該当する土地には雑種地や原野、海浜地などが挙げられます。
これらの土地の負担金は、面積にかかわらず20万円です。
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相続土地国庫帰属制度を利用すると得られるメリットとは
必要のない土地を相続した場合は、相続土地国庫帰属制度を積極的に利用したほうが良いといえます。
なぜなら、この制度にはさまざまなメリットがあるからです。
おもなメリットは3つあるので、確認してみましょう。
メリット①必要のない土地だけを手放せる
この制度の大きなメリットは、必要のない土地だけを手放せることです。
先述のとおり、これまでは相続放棄によってすべての財産を放棄するか、不要な土地を望まずに相続するしかありませんでした。
その点、この制度を利用すると、不要な土地以外の財産を相続することが可能です。
また、この制度は不要な土地を相続したことによる所有者不明土地の発生を予防できるので、行政にとってもメリットがあります。
メリット②さまざまな種類の土地が対象である
2つ目のメリットは、宅地だけではなく、畑や山林などのさまざまな種類の土地が対象であることです。
畑や山林は相続しても利用することが少ないうえ、買主が見つかりにくいため売却処分なども難しく、これまでは相続人の悩みの種になることが多々ありました。
この制度を利用すると宅地以外の不要な土地も手放せるので、相続による悩みが減るでしょう。
メリット③損害賠償責任が限定的である
通常の不動産売却の場合、契約書に記載のない破損や不具合などが見つかると、売主は契約不適合責任を負ってしまいます。
すると、売主が知らなかった場合でも損害賠償責任などが発生する可能性があります。
その点、この制度において損害賠償責任が発生するのは、却下事由や不承認事由に該当することを故意に隠して国に引き取らせたときくらいです。
正直に申請すれば責任を負う心配がないので、安心して手続きができるでしょう。
なお、要件を満たしていなくて制度を利用できない場合は、不動産会社による買取もご検討ください。
買取とは、不動産会社が物件を直接買い取る方法です。
買取価格は相場よりも下がりますが、買主が見つかりにくい不動産でも売却できる可能性があります。
相続土地国庫帰属制度を利用できない土地を手放したいときは、どうぞ不動産会社へご相談ください。
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まとめ
相続土地国庫帰属制度を利用すると、相続した不要な土地を手放せます。
費用は発生しますが、管理や税金の負担がかかり続ける心配や、処分できない悩みなどがなくなるでしょう。
相続土地国庫帰属制度を利用できない土地を処分したい場合は、不動産会社による買取を検討してみましょう。
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