相続時精算課税制度の概要とは?計算方法と注意点を解説
- この記事のハイライト
- ●相続時精算課税制度は贈与した非課税分を相続時まで先送りにできる制度
- ●相続時精算課税制度を用いた相続税を計算する際は相続財産と贈与の合計額を足して計算する
- ●相続時精算課税制度は必ずしも節税にならない点と贈与された財産で物納できない点に注意する
まとまった資金を贈与したい場合、相続時精算課税制度を利用すれば一時的に非課税とすることができます。
ただし、注意すべき点も多いため、制度を利用する前に制度の概要や注意点を把握してから判断すると良いでしょう。
そこで、相続時精算課税制度とはどのような制度なのか、計算方法と注意点についても解説します。
一宮市・名古屋市・西尾張で相続をご検討中の方や相続予定の方は、ぜひ参考になさってください。
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相続時精算課税制度はどのような制度?制度の概要と適用対象者とは
生前に贈与をおこなう場合、一定金額までは非課税となる「相続時精算課税制度」を利用することができます。
ただし、この制度は必ずしも節税となるわけではないため、制度を利用する前に制度の概要について把握しておくと良いでしょう。
相続時精算課税制度の概要
相続時精算課税制度は、贈与額が2,500万円までは非課税となり、相続が発生した際にその贈与額も合わせた額に相続税が課税される制度です。
たとえば、財産6,000万円のうち2,500万円を相続時精算課税制度を利用して贈与したとします。
この場合、2,500万円までは非課税となるため贈与税は一切かかりません。
しかし、相続が発生した場合、残りの3,500万円に相続税が課税されるのではなく、贈与した2,500円を合わせた6,000万円に相続税が課税されます。
このように、贈与時に一旦は非課税となるものの、最終的には非課税分も相続税が課税されるため、あくまでも税金の先送りができる制度であると理解しておきましょう。
なお、2,500万円を超えた部分に対しては一律20%の贈与税がかかります。
適用対象者
相続時精算課税制度を利用したい場合は、贈与者と受贈者のそれぞれが要件を満たす必要があります。
贈与者は、贈与をした年の1月1日時点で60歳以上の父母または祖父母であることが条件です。
また、財産を受け取る側の受贈者は、贈与を受けた年の1月1日時点で18歳以上であり、贈与者の子や孫であることが条件となっています。
手続き方法
相続時精算課税制度を利用する場合は、贈与を受けた年の翌年の2月1日から3月15日の間に、一定の書類を添付した贈与税の申告書を提出する必要があります。
その際の添付書類は以下のとおりです。
- 受贈者の戸籍謄本または戸籍抄本
- 受贈者の戸籍の附票
- 贈与者の住民票または戸籍の附票
これらの添付書類と、相続時精算課税選択届出書を納税地の所轄税務署長に対して提出します。
なお、受贈者、贈与者ごとに選択できますが、一度この制度を選択すると継続して適用され、暦年課税(毎年110万までは非課税)に変更することはできないため注意しましょう。
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相続時精算課税制度を選択した場合の贈与税と相続税の計算方法とは
贈与時に相続時精算課税制度を選択した場合、そのくらいの贈与税や相続税がかかるのでしょうか。
実際に事例を出して計算方法を解説します。
贈与税額の計算方法
贈与税の額は、贈与財産の合計額から利用できる特別控除額(限度額2,500万円)を控除した金額に、一律20%の税率を乗じて計算します。
贈与税=(贈与財産の価額の合計額-2,500万円)×20%
たとえば、贈与財産の合計が4,000万円であった場合は「(4,000万円-2,500万円)×20%=300万円」となり、このケースでは300万円の贈与税がかかります。
ただし、すでにこの特別控除額を控除している場合は、残額が限度額となるため注意しましょう。
相続税額の計算方法
相続税は、前述しているように、贈与時の非課税分と相続時の相続財産の合計に対して課税されます。
ただし、相続税には「基礎控除」というものがあります。
そのため、合計額から基礎控除を差し引いた金額に対して相続税は課されるため注意しましょう。
つまり、合計した金額が基礎控除以下の場合は、相続税が課税されません。
基礎控除の計算方法は以下のとおりです。
基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人の数
たとえば、法定相続人が子ども1人の場合は「3,000万円+600万円×1人=3,600万円」となり、3,600万円までは非課税となります。
さきほどのケースでは、贈与された金額が4,000万円であり、相続した財産が6,000万円であった場合、計算式は以下のとおりです。
4,000万円(贈与合計金額)+6,000万円(相続財産)-3,600万円(基礎控除額)=6,400万円
つまり、この6,400万円に対して相続税が課税されます。
基礎控除を超える場合は、取得金額によって税率と控除額が以下のように異なります。
- 1,000万円以下:税率10%、控除なし
- 1,000万円超から3,000万円以下:税率15%、控除額50万円
- 3,000万円超から5,000万円以下:税率20%、控除額200万円
- 5,000万円超から1億円以下:税率30%、控除額700万円
- 1億円超から2億円以下:税率40%、控除額1,700万円
上記のケースの場合は、6,400万円が取得金額の合計になるため、相続税は以下のように計算されます。
相続税額=6,400万円×30%-700万円=1,220万円
このケースの場合であれば、1,220万円の相続税を納付する必要があります。
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相続時精算課税制度の注意点とは
最後に相続時精算課税制度における注意点を解説します。
主な注意点は以下の3つです。
- 必ずしも節税になるとは限らない
- 贈与された財産は相続時の物納にできない
- 亡くなる直前の贈与は相続財産に含まれる
それぞれの注意点をご説明します。
注意点①必ずしも節税になるとは限らない
相続時精算課税制度は、必ずしも節税になるとは限りません。
たしかに贈与税は2,500万円までは非課税となりますが、相続時にはその非課税分も相続税の課税対象となるからです。
そのため、この制度は節税になる制度ではなく、あくまで税金の先送りに過ぎないため注意しましょう。
ただし、相続税の基礎控除額を下回る場合は、この制度を利用したほうが有利になることもあります。
注意点②贈与された財産は相続時の物納にできない
納税には、現金以外にも相続したもので税金を収める「物納」といった制度があります。
しかし、相続時精算課税制度を利用して贈与を受けた財産については物納として使用できないため注意が必要です。
注意点③亡くなる直前の贈与は相続財産に含まれる
被相続人が亡くなる前の3年以内に贈与していた場合は、その贈与額を相続財産に含めて相続税が計算されるため注意しなければなりません。
これを「生前贈与加算」と呼び、令和6年1月1日以降の贈与については、3年以内から7年以内に延長されます。
ただし、亡くなる前3年超7年以内に贈与した財産については、その合計額から100万円を控除した残高が加算されます。
これらを踏まえて、生前贈与をお考えの場合は早めに対策を考えましょう。
まとめ
相続時精算課税制度は、まとまった資金を贈与しなければならない場合に一時的に2,500万円までは非課税とすることができます。
ただし、相続が発生すると贈与した非課税分も相続税の課税対象となってしまうため、節税対策というよりもあくまでも税金を先送りできる制度と理解しておくと良いでしょう。
一方で、相続財産が基礎控除額を下回る場合は、節税対策として有利に働くこともあります。
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