相続対策で注目の家族信託とは?家族信託のメリット・デメリットを解説
- この記事のハイライト
- ●家族信託とは信託契約によって親が認知症になっても子どもが財産を管理・運用・処分できる制度のこと
- ●メリットは委託者の判断能力に影響されずに財産管理できてハイリスクな不動産の共有も避けられる点
- ●デメリットは受託者を誰にするか争う可能性・契約の同意が得にくいこと・節税対策にはならない点
子どもに不動産などを相続する際は、なるべく税金がかからないような対策を事前に取りたいですよね。
そこで近年注目を集めているのが、家族信託です。
本記事では、家族信託とはなにか、相続対策における家族信託のメリット・デメリットを解説します。
一宮市・名古屋市・西尾張で相続対策として家族信託をご検討中の方は、ぜひ参考にご覧ください。
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相続対策で注目の家族信託とは?
家族信託とは、家族で財産を守るために信託契約を結ぶ方法のことです。
家族信託を利用すると、親がお金や不動産などの財産を実質的に所有しながら、管理運営の権限だけを子どもに預けることができます。
つまり、親が高齢になって判断力が衰えても、子どもが親の財産を適切に管理することができます。
認知症になった場合や、介護が必要な状態になっても、子どもが親に代わって財産の管理・運用・処分をおこなえるのです。
親は財産を実質的に所有し続けますが、管理運営は子どもが担うことによって、親の資産を守りながら、スムーズに次世代へ財産を引き継ぐことができます。
家族信託の仕組み
家族信託は、以下の3つの役割に分かれます。
- 財産の所有者(委託者)
- 財産の管理者(受託者)
- 財産の利益を受ける方(受益者)
通常は、親が委託者兼受益者となり、子が受託者になります。
つまり、親が所有する財産の管理権限を子に預けますが、その財産から得られる利益は引き続き親のものとなる仕組みです。
このように役割分担することによって、親の資産を将来に渡って守ることが可能です。
家族信託が注目を集める理由
背景には、高齢化社会にともなう「認知症問題」があります。
統計によると、75歳以上になると9割近くの方が介護を必要とする状態になります。
年を重ねるごとに認知症のリスクも高まっていくため注意が必要です。
親が認知症になると、子どもでも親の預金を引き出すことができなくなってしまいます。
その結果、介護をする子どもに、経済的な負担がのしかかることにもなりかねません。
こういった事態を避けるには、70歳前後で認知症対策を立てることが賢明です。
「子どもに迷惑をかけたくない」そんな親の願いから、家族信託への関心が高まっているのです。
家族信託なら、認知症になっても子どもが親の資産をある程度自由に管理できます。
高齢化社会の諸問題に柔軟に対処できる点が、家族信託を有力な選択肢にしています。
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相続対策で注目の家族信託のメリットとは?
家族信託の主なメリットは、以下の3つです。
メリット①柔軟な財産管理ができる
家族信託の大きなメリットは、成年後見制度に比べてより柔軟な対応ができる点にあります。
成年後見制度は、本人の財産を損なわないことが最優先されます。
つまり、本人の資産を減らすような運用は認められません。
たとえば、事業主や不動産経営者が認知症になった場合、将来に向けた投資や積極的な経営は制限されてしまいます。
したがって、収益を上げるための機会が失われかねません。
しかし家族信託なら、事前に親から子への権限委譲が可能です。
親が方針を決め、子はその方針に沿って自由に資産運用ができるのです。
投資や事業拡大なども、親の意向次第で実現可能になります。
一方で、家族信託は子に大きな権限が集中します。
そのため、子の人柄や能力に不安がある場合は避けた方が良いでしょう。
つまり、家族信託は成年後見制度より自由度が高い反面、受託者である子への信頼が何より大切になります。
親の意向を汲んだ柔軟な資産運用が可能になる反面、受託者の資質が問われる制度なのです。
メリット②財産管理が委託者の判断能力に影響されない
家族信託が注目される大きな理由は、親の判断能力が低下しても、財産管理に支障がないという点にあります。
親が認知症などで金銭管理が困難になると、銀行口座は凍結されてしまいます。
不動産の売買なども親本人の意思ではできなくなるため、売りたいときに売れません。
このような事態に備える制度として成年後見制度がありますが、実子が後見人に選ばれるとは限らず、財産運用の自由度も制限されがちです。
そこで家族信託の契約を結べば、親の判断能力が低下しても子が代わりに財産を管理できます。
しかも、広い裁量権が子に与えられるため、柔軟な対応が可能になります。
つまり、認知症になっても親の資産を子が自由に運用・処分でき、かつ親の意向を汲んだ運営ができる点が、家族信託の大きな強みなのです。
親の判断能力に左右されず、安心して財産を守ることができるメリットが高く評価されています。
メリット③ハイリスクな不動産の共有
家族信託のメリットは、相続した収益不動産の管理リスクを大幅に下げられる点にもあります。
たとえば、親から不動産を3人兄弟で相続した場合を考えましょう。
それぞれ3分の1ずつ持ち分があり、家賃収入を得ながら経営を続けていきたいとします。
ここで問題となるのが、3人で共有する以上、1人でも認知症になれば、不動産の運用や売却が困難になる可能性がある点です。
新規の賃貸借契約や大規模修繕など、所有者全員の合意が必要な場面で動けなくなります。
とくに、高齢者同士の共有ではこのリスクが高くなります。
しかしこの問題は、家族信託を活用することによって解決することが可能です。
たとえば、末っ子のAがBとCの持ち分を信託により委託運用すれば、ほかの兄弟が認知症になっても、Aが1人で経営を続けられます。
そして受益者をABCとしておけば、家賃収入などを公平に分配できます。
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相続対策で注目の家族信託のデメリットとは?
家族信託には、以下のようなデメリットもあります。
デメリット①受託者を誰にするか争う可能性がある
家族信託には、受託者をめぐって家族間で対立が生じるリスクがあります。
家族信託では、財産の管理・運用の権限を1人の受託者に集中させるのが一般的です。
つまり、受託者以外の家族は実質的に財産を相続できない可能性が高くなります。
したがって、受託者以外の家族にも丁寧に説明し、理解を得ることが何より大切です。
デメリット②契約の同意
家族信託を実行するには、何より親(祖父母)の理解と同意が不可欠です。
しかし、この点が最大の難関になる可能性があります。
まず第一に、家族信託自体が一般的な制度ではないため、親が内容を素直に理解してくれないケースが多いです。
「贈与」や「売買」とは違う概念のため「面倒くさい」「よくわからない」と手続きを渋られがちです。
第二に、財産の名義が子(受託者)に移転する点で、親が強い不安を抱くことがあります。
とくに不動産の場合は「まだ生きているのに、財産を子に取られてしまうのでは」と強く抵抗を示されるのです。
デメリット③直接的な節税対策にはならない
家族信託をおこなっても、直接的な相続税の節税効果はありません。
家族信託では、不動産などの名義は子どもに移転しますが、実質的な所有権である「財産権(受益権)」は親のものです。
つまり、家族信託をしただけでは財産の評価額が下がるわけではありません。
そして、親に相続が発生した際、財産権は信託契約で決めた方(通常は子ども)に引き継がれます。
この時点で、相続税と同等の税金を支払わなければなりません。
家族信託自体に節税の効果はなく、最終的には通常の相続と同様に課税されるのです。
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まとめ
家族信託とは、信託契約によって親が認知症になっても子どもが財産を管理・運用・処分できる制度です。
メリットは、委託者の判断能力に影響されずに財産管理でき、ハイリスクな不動産の共有も避けられる点です。
デメリットは、受託者を誰にするか争う可能性や契約の同意が得にくい、直接的な節税対策にはならない点が挙げられます。
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