相続時に遺言書を紛失した場合の対処法を遺言書の形式ごとに解説!

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相続時に遺言書を紛失した場合の対処法を遺言書の形式ごとに解説!

この記事のハイライト
●自宅に保管している自筆証書遺言書を紛失したときは遺言書の再作成が必要となる
●公正証書遺言書は原本が公証役場に保管されているため遺言書を紛失しても再作成は不要
●自宅に保管している秘密証書遺言書を紛失したときは遺言書の再作成が必要となる

相続時に遺言書があれば、自分の財産がスムーズに相続されます。
しかし、作成した遺言書を紛失してしまう方も少なくありません。
そこで本記事では、遺言書を紛失した場合の対処法を、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言ごとに解説します。
一宮市・名古屋市・西尾張で不動産を相続する予定のある方は、ぜひ参考になさってください。

相続時に自筆証書遺言書を紛失した場合

相続時に自筆証書遺言書を紛失した場合

自筆証書遺言を紛失してしまった場合は、一旦「遺言書を書いていない状態」と考える必要があります。
対処法として、新しい遺言書を作成し直すことをおすすめします。

コピーに効力はない

念のため以前の遺言書をコピーしていたとしても、そのコピー自体には法的な効力はありません。
遺言書の要件である「自筆」を満たしていないためです。
コピーがあれば参考にはなりますが、結局のところ原本を探し出す必要があります。

遺言書を再作成する際のリスク

新しい遺言書を作成する際、以前の遺言書が完全に失われた(火災で燃えてしまったなど)のであれば、今の気持ちを新たに書き表せば構いません。
しかし、単に保管場所が分からなくなっただけで、また見つかる可能性が高い場合はご注意ください。
なぜなら、日付の新しい遺言が原則として優先されるものの、古い遺言がすべて無効になるわけではないからです。
新しい遺言に記載されていない部分については、古い遺言の内容が有効なままになるのです。
そのため、気分だけで書き直してしまうと、後に紛失していた遺言書が出てきた際に、内容の一部が矛盾して混乱を招いたり、遺言者の本来の意思と違う相続となってしまったりする恐れがあります。
また、相続時に古い遺言書が見つかり、新しい遺言書が発見されないリスクもあります。
したがって、紛失時に新しい遺言書を作成する際は、以前の遺言書が出てくる可能性も視野に入れ、内容を慎重に検討しましょう。

自筆証書遺言書保管制度

自筆証書遺言には「遺言書を自分で保管しなければならない」点や「相続が開始された後、家庭裁判所で遺言書の検認が必要」などの手間がかかるデメリットがありました。
そこで2020年に、こうしたデメリットを解消するための「自筆証書遺言書保管制度」が創設されました。
保管制度を利用すると、作成した自筆証書遺言の原本を法務局に預け、電子データとして保管してもらえます。
遺言書を法務局で保管する主なメリットは2つあります。
1つ目は、遺言者自身が遺言書を管理する必要がなくなり、紛失のリスクが減ることです。
2つ目は、法務局が原本を保管しているため、遺言書の偽造や改ざんを防げる点です。
このように、自筆証書遺言書保管制度を活用すると、遺言トラブルを未然に防ぐことができます。

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相続時に公正証書遺言書を紛失した場合

相続時に公正証書遺言書を紛失した場合

公正証書遺言は、公証役場で原本・正本・謄本の計3通が作成され、そのうち原本が公証役場で保管されます。
原本とは、遺言者が公証人立会いのもと作成した遺言書、正本とは公証権限のある者が作成した原本の写し、謄本とは原本の内容をコピーしたものです。

紛失した場合

公正証書遺言を紛失した場合は、遺言書を新しく書き直す必要はありません。
公証役場に遺言書の原本が保管されているため、遺言自体の効力が失われることはないからです。
つまり、相続時に公正証書遺言を紛失しても、原本が公証役場で保管されているため、自筆証書遺言のように、紛失にともなう遺言の再作成リスクはありません。
また、紛失してしまった場合は、作成した公証役場に行けば、謄本の再発行を受けることができます。
なお、再発行できるのは基本的に「謄本」のみです。
「正本」の再発行は、特別な事情がない限り認められませんので注意が必要です。

公証役場が不明な場合

作成した公証役場が分からなくても、平成元年以降の公正証書遺言はデータベース化されているため「遺言検索」というシステムで検索できます。
遺言検索は無料で利用可能です。
謄本の再発行には、1ページにつき250円の手数料がかかります。
ただし、公正証書遺言の公証役場での保管自体は無料です。

公正証書遺言のメリット

公正証書遺言を作成するには、公証人を立ち会わせる必要があるため、手続きの手間や費用がかかります。
しかし、その分さまざまなメリットがあります。
最大のメリットは、遺言書の原本が公証役場で保管されることです。
作成時に遺言者には遺言書の「謄本」(原本のコピー)が渡されますが、この謄本を紛失しても問題ありません。
前述のとおり、公証役場に原本が保管されているため、そこから謄本を再発行してもらえるからです。
つまり、自筆証書遺言とは違い、紛失のリスクが格段に低くなります。
遺言書の保管に不安がある方には、公正証書遺言を検討されると良いでしょう。

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相続時に秘密証書遺言書を紛失した場合

相続時に秘密証書遺言書を紛失した場合

秘密証書遺言とは、遺言内容を第三者に知られずに作成できる方式です。
秘密証書遺言を作成する際は、まず遺言書を所定の方式で書き、それを公証役場に持参して手続きをおこないます。
このとき、公証人は遺言書の存在自体は確認しますが、内容までは確認しません。
つまり遺言内容は秘匿されたままになるのです。

紛失した場合

秘密証書遺言の原本は、公証役場に保管せず、自宅で保管します。
そのため、遺言者が秘密証書遺言書を紛失してしまった場合、自筆証書遺言と同様に新しい遺言書の作成が必要です。
新しい遺言書を作成する際は、紛失していた古い遺言書が後から出てくる可能性があることを忘れてはいけません。
古い遺言書の原本を完全に破棄していた場合など、二度と見つからない状況であれば問題ありません。
しかし、単に保管場所が分からなくなっていただけで、後に古い遺言書が発見されるようであれば、新しい遺言と古い遺言の効力関係がポイントになります。
原則として、新しい遺言書の内容が古い遺言書と矛盾する部分については新しい遺言書の内容が優先されます。
たとえば、古い遺言で「不動産Aは長男に」と記載していたが、新しい遺言では「不動産Aは次男に」と変更していた場合、新しい遺言の内容が優先される決まりです。
しかし、新しい遺言書が優先されるのは矛盾する部分のみです。
古い遺言書の内容で、新しい遺言と矛盾しない部分は有効なままとなります。
つまり、一部の内容だけ古い遺言書が適用される可能性があるのです。
問題は、遺言書の記載内容が曖昧な場合「矛盾しているのか」の判断が難しくなり、遺言をめぐってトラブルになるリスクが高まることです。
遺言書を新しく作成する際は、古い遺言書が出てきた時のことも考慮し、内容を明確に記載しましょう。

秘密証書遺言のメリット

実は、秘密証書遺言にはそれほどメリットがないです。
作成時に公証役場を使うのに、結局は自分で遺言書を保管しなければならず、紛失リスクも高いからです。
実際、利用者はほとんどいません。
仮に公正証書遺言を選んでいれば、遺言書を紛失しても、公証役場に原本が保管されているので、謄本の再発行ができます。
公証役場を使うのであれば、秘密性よりも確実性を重視し、公正証書遺言で作成するのが賢明です。

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まとめ

自筆証書遺言書を紛失したときは、遺言書の再作成が必要となるため、自筆証書遺言書保管制度を利用するのがおすすめです。
公正証書遺言書については、原本が公証役場に保管されているため、遺言書を紛失しても再作成は不要です。
秘密証書遺言書は、自筆証書遺言と同様に自宅保管のため、紛失時は再作成が必要となります。
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この記事の執筆者

このブログの担当者 
渡邉 幸平

◇一宮市・名古屋市内全域を中心に、
不動産仲介及び買取り事業を行っております。
◇一宮市出身の私は、元銀行系不動産売買仲介会社等に従事した経験があり、実績豊富です。
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