収益物件を相続した際の遺産分割はどうなる?家賃の取り扱いについても解説
- この記事のハイライト
- ●被相続人の遺言書がある場合はその内容どおりに収益物件を相続する
- ●家賃の扱いは相続開始前・相続開始後から遺産分割成立前・遺産分割成立後によって異なる
- ●相続した不動産を売却する際は特例を利用して税負担を軽減できないか確認する
親がアパートなどの収益物件を所有していた場合、それらは相続人である子どもが引き継ぐことになります。
子どもが複数人いるようなケースでは、相続開始前から遺産分割成立後に発生した家賃は誰が取得するのでしょうか。
この記事では、収益物件を相続した場合の遺産分割協議の進め方、売却時の注意点などを解説します。
一宮市・名古屋市・西尾張で収益物件を相続するご予定がある方は、ぜひ参考になさってください。
収益物件の相続手続き!相続人の決め方について
相続が発生したら、まず確認したいのが遺言書の有無です。
有効な遺言書が残されていれば、原則としてその内容に沿って遺産を分割します。
たとえば「アパートは長女に相続させる」と遺言があれば、収益物件は長女が引き継ぐことになります。
遺言書がなければ遺産分割協議をする
親が遺言書を残していない、または遺言とは異なる方法で遺産を分割したいケースもあるでしょう。
そのような場合は、相続人全員で話し合って遺産の分割方法を決める必要があります。
遺産分割協議を成立させるには、相続人全員の同意が必要です。
たとえばアパートを売却したいと申し出ても、誰か1人が相続したいと言えば相続手続きは進められません。
収益物件に限らず不動産は均等に分割するのが難しいため、話がまとまらず相続人同士で揉めがちです。
協議が難航すれば、相続人が決定されないまま未分割の相続財産として、申告期限を迎えてしまうこともあります。
遺産分割協後は遺産分割協議書を作成する
遺産分割協議によって収益物件の相続人が決定したら「遺産分割協議書」を作成します。
遺産分割協議書とは文字どおり、遺産分割協議で決めた内容をまとめた書類です。
協議の内容を形に残し、相続人全員から署名・押印をもらうことで「言った言わない」のトラブルを防ぐ効果があります。
遺産分割協議書に作成期限はありませんが、収益物件の名義変更をする際に法務局へ提出しなければなりません。
必要な場面ですぐに提出できるよう、遺産分割協議書はなるべく早めに作成しておくことをおすすめします。
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収益物件の家賃は相続財産になる?家賃の扱いについて
親から相続したアパートに第三者が居住している場合もあるでしょう。
収益物件に入居者がいる場合、相続の手続き中にも家賃が入りますが、この家賃は誰が取得するのでしょうか。
家賃の取り扱いについては、相続開始前・相続開始後・遺産分割成立後によって異なります。
- ●相続開始前:家賃は相続財産に含まれる
- ●相続開始後から遺産分割成立前:家賃は法定相続分で相続人が取得する
- ●遺産分割成立後:収益物件を相続した方が家賃も取得する
それぞれの内容について順番に解説します。
相続開始前の家賃
相続開始前に発生する家賃は、相続財産に含まれます。
そもそも収益物件は親の財産であり、その物件から得られる家賃も親の財産に該当するためです。
そのため親が亡くなったときには、相続財産に家賃も含めたうえで遺産分割協議をおこなわなければなりません。
相続開始後から遺産分割成立前
相続開始から遺産分割が成立する前までに発生する家賃は、各相続人が法定相続分の割合に応じて取得します。
のちに収益物件の相続人が決定しても、相続開始後から遺産分割成立前までの家賃収入分は影響を受けません。
また、収益物件の維持にかかるコストについても、法定相続分の割合に応じて各相続人が相続することとなっています。
実は、相続開始後から遺産分割成立前までの家賃の扱いについては、以前から論争がありました。
争点は「遺産とは別に複数の相続人が法定相続分の割合で取得する」か「収益物件を相続する方が家賃も取得する」かです。
この2つの考えで長年議論されてきましたが、2015年の最高裁判決により、前者の見解に立つことで決着しています。
つまり、相続開始後から遺産分割協議が成立するまでに発生した家賃に関しては、遺産分割とは別と考える必要があります。
「収益物件を相続するから協議が成立する前に発生した家賃も相続できる」というわけではないことを覚えておきましょう。
遺産分割成立後
遺産分割協議が成立した後の家賃は、収益物件を相続した相続人が取得します。
もし収益物件を複数の相続人で共有相続した場合は、持ち分に応じた割合の家賃収入を得ることになります。
収益物件の維持費や固定資産税などの費用も、所有者となった相続人が負担しなければなりません。
なお、収益物件から得られる家賃収入は不動産所得に該当するため、毎年確定申告が必要です。
確定申告は例年2月16日から3月15日までと決まっており、期限を過ぎると無申告や無申告加算税を課される可能性があります。
余分な税金を支払うことにならないよう、確定申告は必ず期限内に済ませるようにしましょう。
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相続した収益物件を売却したい!売却時の注意点とは
収益物件は毎月家賃収入が得られる一方で、管理が大変といったデメリットもあります。
アパートを相続したものの定期的な管理が難しく、売却したいという方もいらっしゃるでしょう。
最後に、相続した収益物件を売却する際に気をつけたいポイントについて解説します。
特例を利用できないか確認する
収益物件を売却する際は、まず特例を利用して税負担を軽減できないか確認しましょう。
不動産を売却して譲渡所得(売却益)が生じると、譲渡所得税を納めなければなりません。
譲渡所得とは、不動産を売却して得た収入金額から、取得費や譲渡費用を差し引いたあとの金額です。
取得費とは不動産を取得した際に要した費用、譲渡費用は不動産を売却した際に要した費用のことです。
相続により取得した不動産を売却した際には、「相続税の取得費加算の特例」を適用できる可能性があります。
この特例は、不動産を相続して3年10か月以内に売却した場合に、相続税額の一部を取得費として加算できる制度です。
特例を適用すると、収入金額から相続税の取得費加算分も控除できるので、その分だけ譲渡所得が低くなり、譲渡所得にかかる税金の負担を軽減できます。
特例を利用するには一定の条件を満たす必要があるため、国税庁のホームページで確認しておくようにしましょう。
売却のタイミングに注意する
収益物件を相続してから売り出すタイミングにも注意が必要です。
先述した「相続税の取得費加算の特例」を利用する場合、相続から3年10か月以内に売却する必要があります。
ただし、すぐに売却するのがお得とは限らず、所有期間が5年を超えるのを待ってから売却するほうが良いケースもあります。
不動産の所有期間が5年を超えると、5年以下で売却するよりも低い税率で譲渡所得税を計算できるためです。
より好条件で不動産を売却するためにも、売却を検討し始めたタイミングで早めに不動産会社に相談することをおすすめします。
入居者がいる場合は立ち退き勧告が必要
収益物件に入居者がいる場合は、売却の1年前から半年前までには立ち退き勧告をしなければなりません。
立ち退き勧告とは、オーナーが入居者に対して部屋から退去するよう求める行為を指します。
ただし、無理に立ち退かせようとするとトラブルに発展する恐れがあるため、慎重に行動する必要があります。
早めに立ち退き勧告をして真摯に入居者と話し合い、円満退去を目指しましょう。
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まとめ
被相続人が遺言書を残していない場合は、遺産分割協議によって収益物件の相続人を決める必要があります。
遺産分割が済んだら速やかに遺産分割協議書を作成して、名義変更の際に提出できるよう備えましょう。
また、収益物件から得られる家賃については、相続開始前・相続開始後・遺産分割成立後によって異なる点にご注意ください。
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